法定返品権

法定返品権

法定返品権に基づく返品ができる場合

 以下の①から④の4つの要件を満たした場合に、購入者は、特定商取引法に基づいて、購入商品を返品(申込みの撤回、契約の解除)することができます

①商品・特定権利の販売条件について広告をした通信販売業者による売買契約であること

サービス(役務)に関する契約は、法定返品権の対象外となります。
したがって、例えば、情報をダウンロードする形で販売するようなケースでは、ダウンロードはサービス(役務)となりますので、法定返品権は発生しません。

② 通信販売業者が、返品特約(「自己都合の返品には応じません」など)を広告に表示していないこと

   もしくは

②´ 通信販売業者が、電子契約において、返品特約を最終確認画面に表示していないこと

ネット通販のような電子契約の場合は、返品特約を、広告だけではなく、最終確認画面においても、顧客にとって容易に認識できるように表示しなければなりませんので、広告と最終確認画面の両方に、返品特約を適切に表示する必要があります

③商品の引渡や特定権利の移転から起算して8日を経過するまでの間であること
④申込みの撤回や契約の解除の意思表示が通信販売業者に到達したこと

クーリングオフとは異なり、特定商取引法上、書面や電磁的記録による意思表示に限らず認められていますので、例えば、電話で返品の意思を伝える方法でも効力が発生します。
また、意思表示が8日以内に「到達」する必要がありますので、クーリングオフとは異なり、8日以内に書面などが事業者に届いている必要があります

最終確認画面における返品特約の表示と法定返品権

 ネット通販については、最終確認画面においても返品特約を適切に表示していなければ、法定返品権という民事ルールが発生することになりますが、ここで求められている適切な表示の具体的な内容に関しては「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」があります

「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」において、顧客にとって容易に認識することができるよう表示していないおそれがあるとされる例

  1. 「最終確認画面中で各商品の説明箇所において、返品特約について何らの表示も行わない方法」
  2. 『「返品不可」、「到着後○日以内に限り返品可」等の表示を行っているものの、膨大な画面をスクロールしなければ当該表示にたどり着けないような箇所において表示している方法』
  3. 『「返品について」等の標題を設けていない等により、返品特約についての説明が埋没している方法』
  4. 「目につきにくいページの隅のような箇所に表示する方法」
  5. 「極めて小さな文字で表示する方法」
  6. 『「返品についての詳細はこちら。」等、返品特約の詳細については共通表示部分で表示していることについての消費者への案内が、極めて小さな文字で表示する方法や、何度もページを移動しなければ共通表示部分に至らない方法』
  7. 「共通表示部分における返品特約について、何十条にも及ぶ返品特約以外の事項を含んだ購入規約の中の他の項目と区分していない等のため、返品特約が埋没しているような表示方法」
  8. 『一つのホームページ中で広告している様々な商品について、それぞれ異なる返品特約が適用されるにもかかわらず、それぞれの商品について、いかなる返品特約が適用されるかを消費者に分かりやすく表示していないために、共通表示部分との対応関係が不分明な方法(例:共通表示部分に、「下着類、飲食料品類等、購入後価値が極めて低下するものは返品不可。」とのみ表示しているため、返品特約の対象に肌着と同様に使用されることがあるTシャツや一般の飲食料品ではない栄養補助のためのサプリメントが入るか否か不分明なものなど、返品特約の対象となる商品の外延が不明確であるもの。)』

法定返品権に基づく撤回・解除の効果

 契約がなかった状態に戻すために、原状回復として、購入者は商品の返還、通販業者は代金の返金をする必要があります。
 そして、返品に要する費用は、クーリングオフとは異なり、購入者の負担となります。