ネット通販の「広告」に関する規制

ネット通販の「広告」に関する規制

虚偽広告・誇大広告の禁止

規制の内容

 通販業者が広告をするときは、以下の事項について、著しく事実に相違する表示をしたり、実際のものよりも著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示をしてはなりません。

①商品の種類・性能・品質・効能、役務の種類・内容・効果
 「商品の種類」とは、商品の機種等のことで、例えばインターネットを利用した通信販売において「データの更新日」を明示しないことにより、既に新型ではなくなっている商品に「最新機種」等の表示を行うことで、消費者に当該商品が最新機種であるかのような誤認をさせるトラブル等に対応するために対象とされています(通達)。
 「商品の性能」とは、機械等の性質又は能力のほか商品等の有する安全性も含まれます(通達)。
 「商品の効能」や「役務の効果」とは、商品を使用すること又は役務の提供を受けることにより得られる効き目のことです。例えば、近視眼矯正器による視力回復の程度、ダイエット食品による体重減少の程度、家庭教師による成績の向上等はこれに該当します(通達)。

 

②商品、役務、事業者の営む事業についての国・地方公共団体・通信販売協会その他著名な法人その他の団体や著名な個人の関与
 例えば「農林水産省認定」、「経済産業省推薦」、「東京都公認」等の表示がこれに該当します(通達)。

 

③商品の原産地・製造地、商標、製造者名
④広告において表示すべきとされている事項

 なお、「著しく」という限定がありますので、社会通念上許容される程度の誇張であれば誇大広告などには該当しないことになります。そして、特商法の通達では、「例えば、一般消費者が広告に書いてあることと事実との相違を知っていれば、当該契約に誘い込まれることはない等の場合」は「著しく」の要件を満たすとされています。

 

違反した場合の効果

 ①行政処分(指示、業務停止命令など)
 ②刑事罰(100万円以下の罰金)
 ③民事ルール(契約の取消権など)は定められていません 

 

不実証広告規制

 主務大臣は、虚偽広告や誇大広告に該当するかどうかを判断するために必要があるときは、表示をした通販業者に対し、期間(原則として15日)を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。
 もっとも、通販業者から書面により提出期限の延長の申出があり、正当な事由がある場合には、その提出期限を延長することもできるとされていますが、例えば、新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるといった理由は、正当な事由とは認められません。
 資料を求められた通販業者が、期間内に合理的な資料を提出しないときは、行政処分との関係では、当該表示は、虚偽広告・誇大広告に該当するものとみなされることになります(不実証広告規制)。なお、刑事罰との関係では、このような不実証広告規制はありません。
 この「不実証広告規制」については、「特定商取引に関する法律第6条の2等の運用指針-不実勧誘・誇大広告等の規制に関する指針-」(通達の別添)で詳細な内容が定められています。

 

広告における表示義務

規制の趣旨

 通信販売においては、場所的に離れた状態で契約が行われ、口頭での説明などもありませんので、購入者と通販業者を結びつけるものとして広告がきわめて重要な意味をもっています。
 この広告において、購入者が一般的に関心を有すると考えられる事項についての表示を義務づけることによって、購入者に必要かつ十分な情報が提供されることとなり、紛争の予防にもつながることになります。
 実務上も、「特定商取引法に基づく表記」といったタイトルで、所定の事項が表示されることが多くなっています。

表示が義務づけられることになる「広告」とはなにか

 特商法の通達において、通信販売広告とは、販売業者等が通信手段により申込みを受けて商品の販売等を行うことを意図していると認められる広告である、とされており、通信販売を行う旨について明確に表示されている場合のほか、送料や口座番号等を表示している場合や、購入が実店舗では不可能な商品の広告等も通信販売広告に該当するとなっています。
 また、同じく通達において、広告は方法のいかんを問わないとされていますので、ウェブサイトはもちろん、電子メール等において表示される広告も含まれます。なお、電子メールにより広告をする場合は、電子メールの本文及び本文中でURLを表示することにより紹介しているサイト(リンク先)を一体として広告とみなすものとするとされています。

広告に表示しなければならない事項

①販売価格・役務の対価

 販売価格に商品の送料が含まれない場合には「販売価格及び商品の送料」を表示しなければならず、仮に、販売価格のみの表示であれば、送料はその中に含まれているものと推定されることになります(通達)

②代金・対価の支払時期・方法
③商品の引渡時期、役務の提供時期
④商品の売買契約や役務提供契約について、申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容

 申込みの期間に関する定めというのは、期間限定販売のように、一定期間を経過すると、商品自体を購入できなくなるもののことです。通達でも、『申込みについて「期間」に該当しない何らかの販売条件又は提供条件がある場合(例えば、個数限定販売)や、価格その他の取引条件(価格のほか、数量、支払条件、特典、アフターサービス、付属的利益等)について一定期間に限定して特別の定めが設けられている場合は該当しない。』とされています。
 申込期間について不実の表示を行い、当該商品が期間経過後に購入できなくなると消費者に誤認させるような不当な表示等を防止する観点から、申込期間を設けている場合には正しく表示することが求められます。
 したがって、申込みの期間に関する定めがある旨とその具体的な期間が消費者にとって明確に認識できるように表示する必要がありますので、例えば、「今だけ」など、具体的な期間が特定できないような表示では、表示したことにはなりません。

⑤商品・特定権利の売買契約、役務提供契約の申込みの撤回や解除に関する事項(返品特約の内容を含む)

 いわゆるキャンセルポリシーのことで、キャンセル(返品)の条件・方法・効果などについて表示しなければならないという規制で、令和3年の特商法改正により、「商品」だけでなく、「役務(サービス)」に関する契約についても、キャンセルに関する定めの表示が必要になりました。したがって、1回の役務提供を行う契約であれば申込みの撤回の可否やその方法などを、複数回又は一定期間の役務提供を行う契約であれば契約途中の解約方法などを分かりやすく表示しなければなりません。
 このキャンセルに関する表示は、施行規則において、「顧客にとつて見やすい箇所において明瞭に判読できるように表示する方法その他顧客にとつて容易に認識することができるよう表示すること」とされており、具体的には、「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」というものが定められています。
 なお、ここで表示義務が問題となるキャンセル(返品)には、商品に契約不適合がある場合は含まれていません。契約不適合がある場合の返品に関する特約がある場合は、⑩の表示義務の対象となります。

⑥事業者の氏名・名称、住所、電話番号

 『「氏名又は名称」については、個人事業者の場合は戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号を、法人にあっては、登記簿上の名称を表示することを要し、通称や屋号、サイト名は認められない』と通達でされています。
 『「住所」については、法人及び個人事業者の別を問わず現に活動している住所(法人にあっては、通常は登記簿上の住所と同じと思われる。)を正確に表示する必要がある』と通達でされています。
 『「電話番号」については、確実に連絡が取れる番号を表示することを要する』と通達でされています。
 また、個人事業者が通信販売を行う場合において、自宅住所や電話番号の表示が必ず必要であるとすればプライバシーの問題も生じかねないので、プラットフォーム事業者やバーチャルオフィスの住所及び電話番号を連絡先として表示することも、一定の要件を満たせば認められると通達でされています。

⑦通販業者が法人で、電子的な広告をする場合には、代表者または業務責任者の氏名 
⑧販売業者や役務提供事業者が外国法人・外国に住所を有する個人で、国内に事務所等を有する場合には、事務所等の所在場所・電話番号
⑨代金・送料以外に必要な金銭(工事費、組立費、設置費、梱包料、代金引換手数料など)がある場合の内容と金額
⑩契約不適合責任についての特約がある場合はその内容 

 契約不適合があった場合に民法で定められている通販業者の責任を、民法の規定とは違う内容にしたい場合にその表示を義務づけるものです。逆に言えば、契約不適合の場合に、民法の規定どおりの責任を負うつもりであれば、この表示をする必要はありません。
 なお、商品の返品には、契約不適合がない場合(⑤の表示義務)とある場合(⑩の表示義務)とがありますので、この2つを明確に分けて表示することが重要です。
 例えば、「商品に欠陥がない場合であっても、○日間に限り返品に応ずる」、「商品に欠陥がある場合を除き、返品に応じない」などと表示していれば、⑤(契約不適合がない場合)についての表示を行ないつつ、契約不適合がある場合には民法の規定のとおりに責任を負う(⑩の表示はしていない)ということになり、適切な表示といえます。
 逆に、単に「○日間に限り返品に応ずる」、「返品に応じない」などと表示した場合には、契約不適合がある場合・ない場合のどちらの返品ルールなのかが不明確になりますので、表示の仕方としては不適切ということになります。仮に、このような表示がなされている場合は、広告内容の解釈としては、契約不適合がない場合の表示と解され、引き渡された商品が契約の内容に適合しない場合の通販業者の責任については、民法の規定どおりということになります(通達)。

⑪ソフトウェアを利用するために必要なコンピューターの動作環境(OSやCPUの種類、メモリの容量、ハードディスクの空き容量など)
⑫商品・特定権利の売買契約、役務提供契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び金額、契約期間、その他の販売条件・提供条件

 令和3年特商法改正により、商品だけでなく、「役務(サービス)」についても表示が必要になりましたので、いわゆる定期役務提供契約(サブスク)についての広告表示が義務化されたことになります。

⑬商品の販売数量の制限その他の特別の商品・特定権利の販売条件や役務の提供条件があるときは、その内容
⑭広告の表示事項の一部を表示しない場合であつて、書面や電磁的記録を請求した者に金銭を負担させるときは、その額(カタログの送料など)
⑮通信販売電子メール広告をするときは、通販業者の電子メールアドレス