法定返品権と誤認による特定申込み取消権の関係

法定返品権と誤認による特定申込み取消権の関係

 ネット通販(電子契約)の場合、通販業者は、返品特約を、広告だけではなく、最終確認画面においても、顧客にとって容易に認識できるように表示しなければならないとされており、その表示がなければ、商品の販売契約については法定返品権が発生することになります。
 他方で、最終確認画面における表示義務違反があれば特定申込み取消権も発生することになりますので、最終確認画面における表示の仕方によっては2つの民事ルールが問題となります。

ネット通販の販売対象となっているのが「商品」の場合

「広告」と「最終確認画面」のいずれかにおいて、返品に関する適切な表示がない場合

 商品の販売契約の法定返品権が発生することになりますので、商品の引渡から8日以内であれば、購入者の自己都合の場合も含めて、購入者からの返品の求めに応じなければなりません

最終確認画面における特定申込み段階での表示規制の違反があった場合

 表示規制の違反(不実表示、不表示、誤認表示)があり、購入者が誤認した場合には、商品販売契約の誤認取消権が発生します。
 誤認取消権は、法定返品権とは異なり、誤認に気づいてから1年間は取消ができます。

 

《ネット通販の商品販売契約における広告・最終確認画面の表示と法定返品権・誤認取消権》

 

ネット通販の販売の対象となっているのが「役務」の場合

 役務については、「広告」において返品に関する表示をする義務はありますが、仮に広告に表示がなかったとしても表示義務違反になるだけで、民事ルールである法定返品権は発生しません。
 他方で、最終確認画面における特定申込み段階での表示規制は「役務」も「商品」と同様に対象となっていますので、表示規制違反(不実表示、不表示、誤認表示)があり、購入者が誤認した場合には、役務提供契約の誤認取消権が発生します。